第11回-根本塾「造影CT技術の基礎と発想の転換による応用表示」
CT造影検査の進化と発展は、過去数十年にわたり、医療診断における重要な変革をもたらした。初期のCT造影検査では、被検者に一定用量のヨード造影剤を一定の注入速度(mL/s)で投与するという汎用的なアプローチが主流であった。この方法は、年齢や性別、体格にかかわらず、プラスチック容器やバイアル包装容器のほぼすべてを使用し切るものであった。しかし、ヘリカルCT技術の発展に伴い、画質の向上やスキャンの高速化が実現され、比較診断や再現性の重要性が認識された。このため、造影剤の投与方法を最適化するための研究が始められた。また、非イオン性のヨード造影剤の普及により副反応が軽減され、腎機能を考慮した最低限のヨード使用量(mgI)で最高の診断能を提供するといった発想から、その安全性が向上した。
そして、循環血液量(L)が体格に依存することを活用し、体重(kg)に応じてヨード造影剤の用量を調整するアプローチが一般的になった。また、循環動態を予測するためにtime- enhancement curve(TEC)を用い、造影剤の到達タイミングを被検者に合わせて最適化する手法も広まった。同時に、インジェクターのインターフェース開発が複雑なプロトコールを簡便なシステムに変えた。一方で、当時のCT造影検査においては、ヨード造影剤の用量と注入速度、注入時間(s)が基準であったため、TECのピーク時間(s)をカスタマイズすることは不可能であった。そこで、TECをカスタマイズするアクションから、可変係数を用いた可変注入システムも開発された。これは一例であるとはいえ、造影CT技術はより正確で効果的な診断ツールとして可能性と進化の余地を残していると考えられる。
最終的に、体格に合わせたヨード造影剤の調整と循環動態の予測は、個別化されるかも知れないが、CT造影検査の進歩は医療分野における重要な進展となるはずである。今回は、過去からの造影CT技術をふり返りつつ、基礎と応用例について示していく。
-
登壇者
さいたま赤十字病院
放射線科部
寺澤 和晶 先生