脳血管CTAの実践的撮像法 2
穿通枝を描出するための空間分解能
撮像条件の中で空間分解能に影響を与えるパラメータを、青で示します。
Revolution HD Veo (GE Healthcare) |
Aquilion Prime SP (CANON) |
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スキャン範囲 | 頭蓋頸椎 移行部から頭頂 | |
スキャン方法 | ヘリカルスキャン | ヘリカルスキャン |
Beam幅(スライス厚) | 0.625×32mm / 0.625×64mm | 0.5×80mm |
回転時間 | 0.4 /0.5/0.6 秒 | 0.6 /0.75 秒 |
Pitch Factore | 0.516 / 0.531 | 0.563 / 0.637 |
管電圧 | 100kV | 100kV |
管電流 | CT-AEC NI 0.6 @ 0.625mm | CT-AEC NI 0.6 @ 0.5mm |
焦点サイズ | Large | Small |
再構成関数 | Detail | FC44 |
逐次近似応用再構成 | Asir-V 30% | ADER 3D Enhanced Standard |
スキャン時間 | 4~6秒 | 7.5秒 |
体重当たり時間当たり ヨード量(FD) |
26.6mgI/kg/sec | 28.0mgI/kg/sec |
造影剤注入時間 | 12秒 | 13秒 |
タイミングの決め方 | Test injection 法 | Bolus Trucking 法 |
- 空間分解能は、体軸方向の空間分解能と、スライス面の空間分解能に分けられる
- 体軸方向の空間分解能に、最も影響を及ぼすパラメータはスライス厚
- スライス厚が、薄いほど空間分解能が高い
- スライス面の空間分解能に影響を及ぼすパラメータ
再構成関数/逐次近似応用再構成の強度など
穿通枝を描出するための再構成関数について
例として,頭部に使用できる3種類の再構成関数のMTFをFig.2に示します
Fig.2
- MTFが横軸と交わる位置が、右に行くほど空間分解能が高くなる
- MTFが5%になる部分が,その関数における空間分解能に対応するとされている

MTFのグラフの横軸は空間周波数で表されますが
空間周波数の単位のままでは
何ミリメートルまで見える空間分解能なのかがよくわかりません.
そこで空間周波数をミリメートルに変換してみます
STANDARD関数の空間分解能を考える
Fig.3
- 5%MTFに相当する空間周波数は0.76cycle/mm
- 空間周波数の2倍の逆数を求めることで、ミリメートル単位に変換される
- 上記により、0.76の2倍の逆数は0.65mmで、これがSTANDARD関数の空間分解能となる
脳血管が対象とする血管の太さ
Internal Carotid | 2.70-4.55mm |
Middle cerebral | 1.87-3.16mm |
Anterior cerebral | 1.17-2.44mm |
Anterior communicating | 1.67-2.11mm |
Anterior choroidal | 0.60-1.0mm |
Posterior communicating | 1.28-1.58mm |
Basilar | 2.7-4.28mm |
Posterior cerebral | 1.44-2.47mm |
Superior cerebeller | 0.72-1.50mm |
Fig.4
- Fig4の中で、穿通枝に該当するのは前脈絡叢動脈 (Anterior choroidal artery)
- 前脈絡叢動脈の血流障害は,恒久的な神経脱落症状をきたす
- 特に内頚動脈瘤の治療においては、非常に重要な穿通枝である
- 脳血管CTA術前検査において、前脈絡叢動脈の描出は、非常に重要です
- この前脈絡叢動脈の描出を想定し,Fig2で示した3つの再構成関数の中から
最適な関数を求めます
Fig.5
- Fig.5は、3つの関数の空間分解能とMTFを示している
- 前述した式により、それぞれの5%MTFをミリメートルに換算した値となる
SOFTが0.746mm/STADDARD が0.658mm/DETAILが0.526mm - この結果より,前脈絡叢動脈の径0.6mmよりも空間分解能が小さな値を示している
「DETAIL」を選択することで,前脈絡叢動脈が描出できると推測される
Fig.6
- Fig6は、3種類の再構成関数を使用した前脈絡叢動脈の違いを示している
- 3つの中で最も空間分解能の低かった「SOFT」では前脈絡叢動脈の描出は困難
- 「STANDARD」に比べて空間分解能の高かった 「DETAIL」では
良好に描出されていることが確認できる

この結果より,脳血管CTAにおいて穿通枝を描出させるためには
最低でも0.6mm以下の空間分解能が必要なことが示された
~ 次回へ続く ~